「ダーティーハリー」
クリント・イーストウッドと言えばマカロニウエスタンとコレですね。
後年自ら監督主演してアカデミー賞を取った「許されざる者」の冒頭字幕で「この映画をレオー
ネとシーゲルに捧げる」って出るレオーネはマカロニウエスタンのセルジオ・レオーネ監督で、シ
ーゲルは本作のドン・シーゲル監督です。
俳優がスターになって行くには大ヒット映画に出なきゃダメですよね、それにはそれほどの映
画を作る才能のある監督の存在が必須なワケで、イーストウッドは前記のふたりの大監督に出
会ったことによって凄い運命を切り開いたと言えるでしょう。
イタリアでレオーネによる三本のマカロニウエスタンに主演し、名声を得たイーストウッドがア
メリカに凱旋してハリウッドでスターになるきっかけになったのが本作。
レオーネの狂おしい情緒に対してこのドン・シーゲルの描く生生しいアクションの迫力には全
く驚かされる。
冒頭ハリーがホットドック屋にいると道路の向かいで銀行強盗が始まっているのが見える。
取り合えず店のオヤジに警察に連絡して貰うんだけど、間に合わないと思ってホットドックをム
シャムシャ喰いながら店を出ると犯人に向かっておもむろに44マグナムの銃口を向け、ズドン
とぶっ放す!
この「おもむろに」ってとこがポイントで、普段余り使う言葉じゃないんだけれど、小説なんか
読むとよく出て来ますよね「おもむろに」って、この映画観てオレは、おお〜こゆのを「おもむろ
に」って言うんだなぁ。と感じたのでした。
そしてこの44マグナムの大砲の様な銃声! 吹っ飛ばされる犯人! この演出でもう全く引
き付けられましたね。
コレを観た世の男の子たちはみんな44マグナムのモデルガンを買ってパンとか食べながら
真似したでしょ? コレは本当に本当にカッコ良かった。
クレージーで凶暴な悪役の「スコルピオ」もキョーレツで良かったですねぇ♪
スコルピオが誘拐して地面に埋めた少女の居場所を聞き出す為にハリーが夜のニューヨーク
を公衆電話を巡って引き回される展開はまさにその後の "刑事引き回されパターン" の原型な
んでしょう。
このスコルピオの真似もよくやってた。後半スクールバスを乗っ取って小学生の頭を小突き
ながら一緒に歌うところ「ボートボートこ〜げよ〜ボートこ〜げよ〜ホラ! 歌うんだぁ!」って、
英悟版では「ローアローアローアボーローアローァボー」でした(笑)
この後ハリーはシリーズになって2・3・4・5まで作られるんだけれど、どれもシーゲルによる
本作の凄みには遠く及ばない物ばかりでしたねぇ。まぁそれなりにそれぞれ楽しめたけど。
テレビで観ていた僕等の世代にとってはクリント・イーストウッドと言えばいつも山田康夫の
吹き替えでした。
吹き替え版でしかイーストウッドを知らなかったオレ等にはあ〜のキョーレツな声音がまたイ
ーストウッドの風貌になんともピッタリと言うか、ホントの声を知らずに吹き替えしか聞いてなか
ったからしょうがないんかもしれないけど、初めて字幕で当人の声を聞いた時ゃ、なんともハス
キーで弱弱しいと言うか、な〜んか物足りなくってねぇ。やっぱしイーストウッドはあの独特の
抑揚を付けたダミ声が良いなぁ、と思ったのでした。